本研究の課題は身体の観点から日露文化交流を見直すことにある。ロシア出張では、そのための史料の調査収集とロシア人研究者との意見交換を主目的とした。すなわち、ロシア国立海軍文書館では第二回遣日使節団長であるレザノフの日誌、第三回遣日使節団長であるプチャーチンの日誌などを調査、複写した。ロシアナショナル図書館写本部ではレザノフ文書を調査、複写した。ロシア帝国外交文書館では、第一回遣日使節団長のラクスマンの日誌、レザノフの手紙、日誌などを調査、複写した。ロシア国立法令文書館では、日露文化交流の出発点となった日本からの漂流民伝兵衛の陳述を調査し、必要箇所を複写した。さらに、ポストニコフ博士やチェレフコ博士と意見を交換した。ルイビンスクで行われた国際会議では日露文化交流史の観点からネフスキーをとりあげ報告し、アルパートフ博士、リフチン博士などと議論を交わした。 国内では、東京大学の史料編纂所が所有する北方史料を調査し、「魯西亜人取扱手留」を複写した。「日露関係史料をめぐる国際研究集会」に参加し、ロシア国立海軍文書館館長ソボレフ氏、同副館長マレヴィンスカヤ氏、サンクトペテルブルグ大学クリモフ教授、東京大学藤田覚教授、保田孝一岡山大学名誉教授、中村喜和一ツ橋大学名誉教授などと意見を交換した。特別展示「ロシア海軍と日本-19世紀の日露関係史料-」や「日露関係史料原本特別陳列会」では、日本とロシアの原本史料類を見た。 以上の史料・見聞をもとに、目下論文「身体表現から見た第2回日露会談」(仮題)を執筆中である。
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