平成15年度は、前年度に引き続き、関連史料の調査・収集をおこなつた。具体的には、ロシアでは、ロシア海軍文書館、ロシア海軍博物館、ロシア海軍図書館、ナショナル図書館、国立歴史文書館、東洋学研究所で資料調査をおこなった。海軍博物館では、モジャイスキーの絵をすべて撮影した。日本では、戸田村郷土資料館、下田郷土資料博物館、下田市史編纂室、宝仙寺で第三回プチャーチン遣日ロシア使節団関係の資料を調べ、根室郷土資料保存センターでは第一回ラクスマン遣日使節団関係の資料を調べ、長崎県立長崎図書館、長崎市立博物館では第二回レザノフ遣日使節団関係の資料を調べた。 以上の調査資料に関しては、以下の国際学会で研究成果を報告し、国内外の研究者と情報を交換した。 モスクワの「漂流民シンポジウム」ではロシアの対日政策を決定づけたピョートルと伝兵衛の出会いについて報告し、ウラジオストクの「日露学術シンポジウム」ではロシアのナショナルアイデンティティについて報告した。下田で開催された「開国シンポジウム」では意見を交換した。ワルシャワでは、パネラーの一人として、視覚メディアに現れた「江戸時代の日露相互イメージ」について報告、ロシアおよびヨーロッパの日本学者と知見を交換した。今回の諸報告により、日露交流において身体の果たした役割の重要性が明らかになった。 さらに、大阪外国語大学ヨーロッパI講座発行の『ロシア・東欧研究』第18号に「江戸時代のロシアイメージ」と題し、研究成果を公表、現在印刷中である。外交儀礼の分析を中心に日露関係における異文化コミュニケーションの質(第三国を介してのコミュニケーション、直接コミュニケーション、模擬コミュニケーション)により形成されたロシアイメージの多様性を明らかにした。ナショナリズム形成以前のイメージの多様性の問題が今後の課題である。
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