研究概要 |
本年度は研究課題である「テューダー絶対王政期における王の統治技法」について、16世紀イングランドにおける議会課税の一つである10分1税・15分1税の分析を中心に研究活動を行った。 同税はもともと税負担者の資産査定を行い、都市においてはその10分1、それ以外の地域においてはその15分1を支払うという徴税方法をとっており、いわゆる直接査定税であった。しかしながら,各徴税地域において次第に資産査定が行われなくなっていった。そのため、1334年以降に1332年の資産査定記録と徴税額に基づいて、各徴税地域へ徴税額が割り当てられることになった。この割当額は、1625年に同税が廃棄されるまで基本的に維持されたのである。国王政府にとって、同税を用いることのメリットは、割り当て税であるため、課税がなされたときに収入額を予測できた点である。そのため、たとえば同税を用いることで対仏戦の際の軍事予算を立てやすかったのである。ただし、同税がうまく機能するためには、状況に応じて割り当て税額の増加が可能であり、また各地域間の割当額の不均衡を調整できるような融通性が確保されている必要があった。しかしながら、先述のように同税の各地域における割当額は14世紀半ば以来基本的に変わらなかったため、16世紀にはいるとイングランドの経済状況をほとんど反映しておらず、各地域間で同税の負担の不均衡が増していったのである。そのような税制上の不備を補うために国王政府は、1520年代に新たに直接査定税である補助税(the Subsidy)の導入を行った。こうして直接査定税と割り当て税を併用されることになったのである。
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