アッティカの碑文文化の分析に関する今年度の研究実績は以下の通り。 1.碑文と歴史叙述の関係については、2005年8月17日から21日にかけて、上海のFudan Universityで開催された、3^<rd> international Conference on Ancient Historyにおいて、"Historiography and Inscriptions in Ancient Greece"と題して発表した。その原稿は、加筆修正したものを主催者に提出済み。2006年中に出版される予定である。ここでは、碑文がいかに読まれたかではなく、いかに語られたかと いう問題を論じた。 2.2006年2月25日から3月11日にかけて、アテネのEpigraphical MuseumおよびオックスフォードのCentre for the Study of Ancient Documentsにおいて、史料調査および成果のレヴューを行った。特に実際の碑文の書き写しに多くの時間を費やした。 3. 4年間の研究成果の半分は、『アッティカの碑文文化』と題する著書として、早ければ2006年度中に出版するつもりで、執筆中である。本書は14章から構成され、アッティカにおける碑文文化を包括的に分析し、碑文文化という視点から、アッティカにおける政治、宗教、国家、そして文字と人しだの関係を論じるものである。従来のように碑文を史料として、政治、宗教、国家等を論じるものではない。 4. 4年間の研究成果のもう半分は、『アッティカ碑文史料撰』と題する著書として、早ければ2007年度中に出版するつもりで、執筆中である。本書は約120の選ばれた史料から構成される碑文史料集で、従来のテキスト情報に加えて、碑文の写真を多く掲載している点が特徴である。
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