本研究の課題は、ロベスピエールの言説がジャコバン独裁期の人びとにどう受容されたのか、を検討することにあった。この課題を遂行するため、平成14年度から平成15年度にかけての研究期間中、夏期休暇などを利用して計3回渡仏し、国立古文書館、パリ警視庁史料館、パリ市歴史図書館、フランス国立図書館などに所蔵されているマニュスクリを中心とする史料の調査と蒐集をおこなった。その間、これらの史料蒐集の成果をも背景に、ジャコバン独裁期におけるロベスピエールの言説の構造とその歴史的機能について分析するとともに、その意味を文化的観点から捉えかえそうとした論文「ロベスピエールとフランス革命--文化現象としてのロベスピエールの言説」(『思想』938)や、フランス革命前後の王の身体表象の変化に焦点を当てることによって王政から共和制への移行の問題を論じた論文「フランス革命と王権--王の身体表象の変化を中心にして」(『岩波講座天皇と王権を考える 2統治と権力』岩波書店、2002)、さらには権力と儀礼や象徴との関係というテーマに関わる近年の研究をサーヴェイした「儀礼・象徴行為と権力関係」(『現代歴史学の成果と課題 1980-2000年 I 歴史学における方法的転回』青木書店、2002)を公にした。現在は、とくにジャコバン独裁期のパリ民衆にかんして蒐集してきた史料を整理・分析する作業をおこなっており、この作業の成果は、できるだけ早い時期に雑誌論文というかたちで公表したいと考えている。
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