研究課題
基盤研究(C)
1.日本人社会の多様性について:アメリカの移民・エスニック集団の研究者はエスニシティを本質化する傾向がある。公共団体の役員は、日本人社会内の権益を代弁し、それゆえ公共団体は日本人社会内の最終的利害調整の場として機能した。エスニックな団体として、移民社会が多様であればこそ「公共」的性格を持った調整団体を必要とし、その団体は、必然的に各会の代表者的人物が集まって協議する場となったのである。2.ナショナリズムの機能について:公共団体は、在米日本人が外国滞在者として持つ「ナショナル」な感情を有効に利用できた。半政府的な権能と日本というシンボルを利用して、日本人社会をある程度強制的にまとめることが可能だった。その理由は、第一に領事が調停に乗り出すことが利益主張の「限界点」を当事者に知らせる象徴的な意味を持っていたこと、第二に領事を引きずり出すような働きをしたという自己満足を当事者に与えたことである。このような象徴的ナショナリズムのあり方は、日中戦争激化に対応した献金、慰問袋などの明示的現象とは別である。公共団体を介在する「日常的実践」としてのナショナリズムが今後の研究に示唆するものは多い。3.自発的結社としての公共団体:公共団体は移住先での利害に基づく「エスニック」な自発的団体であるのみならず、州の会社法に基づく現地法人でもあった。日系移民史ではアメリカ社会からの排除を大きなテーマとしてきた。日本人移民は無権利状態におかれたことになっている。しかし無権利状態は、政治的権利のみを指すものであった。無権利なはずのアメリカ社会の中で、個人・法人としてさまざまな活動ができた。移民社会が形成したあらゆる自発的結社を、エスニックな団体である特色を持ちつつ、なおかつそれぞれの分野においてアメリカ社会に参入を果たすものであったという分析が可能である。
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すべて 雑誌論文 (6件)
『立命館言語文化研究』(立命館大学国際言語文化研究所) 17巻4号
ページ: 43-58
Ritsumeikan Studies in Language and Culture (International Institute of Language and Culture Studies, Ritsumeikan University) 17:4
『立命館言語文化研究』(立命館大学国際言語文化研究所) 17巻1号
ページ: 3-6
Ritsumeikan Studies in Language and Culture (International Institute of Language and Culture Studies, Ritsumeikan University) 17:1
『立命館史学』(立命館史学会) 24号
ページ: 85-99
Ritsumeikan Shigaku (Historical Association of Ritsumeikan University) no.24