今年度は(1)外国人留学生、(2)入学規定・カリキュラム・試験規定、(3)財政と経営、(4)フランクフルト商科大学の歴史、(5)ドイツの商科大学と東方教会の世界、の5課題について重点的に研究をおこなった。課題第1では、ドイツの商科大学に留学してディプローム試験に合格した外国人学生の出身地の特定作業を続行した。課題第2では、ドイツで最初に創設されたライプチヒ商科大学の入学規定と試験現定を検討し、さらにライプチヒ商科大学をモデルに独自の規定をもったケルン商科大学で、ディプローム試験に合格した学生が如何なるカリキュラム編成のもとで何をまなび、如何なる試験科目を選択したかを研究した。課題第3では、メーヴィッセン基金を基盤に創設されたケルン商科大学がどの程度ケルン市の財源に依存したかを調査し、全収入にしめる学生納付金の比率と、全支出にしめる教授の人件費の比率の推移を研究した。課題第4では、フランクフルト商科大学卒業試験合格者の個人データを集成した。課題第5では、現在のアルメニア、ウクライナ、ルーマニア、ブルガリア、セルビア、ギリシャなどからドイツの商科大学に留学した正教徒、ギリシャ・カトリック、アルメニア教徒について調査し、地理的分布と社会出自について研究した。このうち、課題第4と5に関して論文を公刊した。課題第2に関する論文は印刷中である。課題第3については経営史学会第39回全国大会で報告した。また、マックス・ヴェーバーが何故に商科大学を厳しく批判したかの問題について社会経済史学会第72回大会で報告し、ブレーメン商業会議所の専務理事の職に応募したが採用されなかった経緯が背景にあるとの仮説を提示した。
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