1898年から1899年にかけてドイツ、オーストリア・ハンガリー、スイスにおいて「商科大学」(ライプチヒ)、「輸出アカデミー」(ウィーン)、「東方商業アカデミー」(ブダペスト)、「商業アカデミー」(ザンクト・ガレン)とよばれる広義の「ビジネス・スクール」が続々と創設され、1919年までに、その数は11に達した。これらの商科大学に関する社会史研究が本研究の目的である。平成14年と平成15年度は、(1)ライプチヒ商科大学の在籍学生の構成、(2)ディプローム試験合格者のなかのローマ・カトリックの比率、(3)フランクフルトに特有の「保険専門員試験制度」をもつフランクフルト商科大学の創設と展開、(4)ディプローム試験に合格したアルメニア教徒、ギリシャ正教徒、ギリシャ・カトリック教徒などの「東方キリスト教の人びと」の構成を考察した。これらの考察を通して、ドイツ、オーストリア・ハンガリー、スイスにおける「ビジネス・スクール」が、単なるビジネス教育の場ではなく、さまざまな国籍、民族、信仰、言語をもつ学生から構成された多元的価値社会を構成していたことが確認できた。研究成果は「はしがき」のなかの業績一覧にまとめてある。
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