15世紀末期のモスクワ公国の社会を考察するに当たり、今年度はモスクワ大公イヴァン三世の宮廷下で発生した後継者争いを中心に検討した。この問題は単に支配者層間の権力争いであっただけでなく、修道士ヨーシフ・ヴォロッキーも深く関係したキリスト教会内の異端騒動とも深く関係すると考えたからである。 この問題についてはロシアの研究者間でも意見の一致を見ていない。すなわち、大公イヴァンの中央集権化政策に賛成する貴族と反対する貴族の対立と見る研究者がいる。また、当時近づいていたリトアニア戦争をめぐる宮廷内の対立をこの混乱の原因とする研究者も多い。その他外交問題を重視する人もいる。これら見解に当時教会を悩ませていた異端運動の関係を考慮しようとした。特に異端運動撲滅に奔走していた修道士ヨーシフを取り巻く人間関係に注目し、宮廷の混乱への影響を検討しようとした。 使用した史料は主に年代記である。そのほかに外交文書、ヨーシフの作品などを使用する予定。残念ながら今年度は結論を導くところまで至らず、来年度に持ち越される。
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