1.研究の目的および実施基本計画 本研究は、東北アジア極東地域における完新世的な石器がどのようにして成立するのかを、具体的な資料をもとに追及するものである。このため、(1)中国・モンゴル・東シベリア・極東・朝鮮半島・日本の完新世前半の石器組成と技術基盤の追求、(2)石器技術の変化と波及を支えた原産地遺跡の開発と石器供給システムの変遷の追及という2つの視点で研究を実施する。 2.調査・研究 1)東シベリアエニセイ川流域の細石刃石器群の研究 2)北部九州の楔形細石刃石核を有する石器群の製作技法研究 3)韓国細石刃文化期の遺跡(新北遺跡・好坪遺跡・中洞遺跡など)の石器資料調査 4)韓国旧石器文化の編年的研究に関する研究 5)韓国の新石器時代遺跡資料(東三洞貝塚・凡方貝塚・細竹遺跡)の調査研究 6)中国東北地方・内モンゴル・朝鮮半島・沿海州地方における黒曜石出土遣跡地名表の作成 7)極東地方における黒曜石製石刃の研究-ザイサノフカ文化を中心として- 8)東三洞貝塚・凡方貝塚出土黒曜石の産地同定結果の研究 10)九州地方の黒曜石原産地(腰岳)の調査と石材供給システムの研究と研究発表会の実施 11)南九州地方縄文時代草創期〜早期の石器製作システムの再検討 3.研究成果 1)朝鮮半島を軸とした極東地域の旧石器研究から、東北アジアにおける後期旧石器の成立は投擲具としての石製槍先に求められることが明らかになった。 2)極東アジア東南部のの完新世への移行期の狩猟道具は森林化を前提とした槍および弓の成立を基軸とするが、石器組成や加工において、地域差が大きい。とくに磨製石器は出現時期の差が認められ、地域ごとの石材環境に大きく制約を受けていた。 3)黒曜石の石材利用は後期旧石器時代初頭から認められ、新石器時代をピークとするが、極東地域では青銅器時代以降にも黒曜石製刃器が発達するなど暫時的な利用よりも時代的な流行が認められ、雑穀農耕との関連が予想された。
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