下北半島の尻屋崎周辺で発見した6つの洞窟のうち「尻労安部洞窟」(安部遺跡)と名づけた遺跡を重点的に調査した。この発掘調査は、平成14年から、合計3回、調査区を拡張しながら、約16m^2の範囲を、最深部約2.5mまで掘り進めた。どの層位にも大小さまざまな石灰岩の角礫が大量に含まれているために発掘は困難を極め、掘りあげた全部の土壌を水でとかして、ふるいで遺物を検出するという方法を採った。 その結果、上層部(1・2層)から、縄文時代の主に中期末〜後期はじめに属する土器と共に、石器・人骨それに多種多様な動物遺体が高密度に含まれていることが判った。この発見により縄文時代における狩猟、漁労活動や、埋葬儀礼に関する貴重な成果を得ることが出来た。 さらに、最新の調査では、上層部(1・2層)の下にあってほとんど遺物が出土しない層を挟んで、下部に石器と動物遺存体を包含する4層、およびさらに深い12層から動物遺存体を、新たに検出することが出来た。この下層(4層)からは剥片を素材にした錐状石器など数点が出土し、これらは、縄文時代のごく初期か、旧石器時代に属する可能性があると考えられる。また、上層部(1・2層)に含まれている石器のなかにも、旧石器時代かその直後の時期に属する石器類(彫器・大形尖頭器製作に生じる剥片など)が、.新たに発見された。そうした結果から、今後この下層の4層・12層周辺を拡張して調査することによって、旧石器時代の遺物と、絶滅動物、人骨が共伴して発見される可能性が高くなったものと期待できる。
|