研究概要 |
この研究の目的は、古代の日本,韓国,中国の出土資料を時代や地域ごとに整理することによって、東アジアにおける古代のガラス生産技術を大系的に理解することにある。対象とする資料は、ガラス製品、ガラスルツボ・ガラス玉製作鋳型・ガラス原材料などのガラス生産関連遺物、容器・硯などの鉛釉陶器、瓦・磚・陶棺などの鉛釉器物、そして鉛釉生産関連遺物等である。 今年度は、従前から行っているガラス製品の出土資料を補うとともに、日本・韓国出土の鉛釉陶器及び鉛釉器物について資料収集、検討を加え、データベース化に向けての資料整理を行った。なかでも、施釉技術の共通性あるいは定着化という視点から、鉛釉陶器では、日本・韓国に共通してみられる「硯」をとりあげた。古代日本出土の硯は、正確な点数は把握されていないものの1万点を超えると言われている。そのうち、ガラスと共通する鉛釉で施釉された硯は10点にも満たず、中国唐三彩1点のほかはそのほとんどが新羅からもたらされたものとされている。その為に日本出土鉛釉施釉硯の当時の評価を把握する目的で、国内の主要遺跡から出土した硯約1500点について検討を加えた。同様に瓦・磚・陶棺などの鉛釉器物についても資料収集・検討を行った。その結果、以下のような見通しを得た。時代的には、古代日本では、7世紀代に新羅・百済からもたらされた鉛釉製品が少数認められるが、生産技術としては定着していないこと。しかし、詳細に資料を検討していくと、奈良時代(8世紀)になると鉛釉の硯蓋のほかに大量の鉛釉瓦が生産されており、奈良時代の中で、国内での技術革新の動きが生じたことである。
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