この研究の目的は、古代の日本、韓国、中国の出土資料を時代や地域ごとに整理することによって、東アジアにおける古代のガラス生産技術を大系的に理解することにある。対象とする資料は、ガラス製品、ガラス坩堝、ガラス玉製作鋳型・ガラス原材料などのガラス生産関連遺物、容器、硯などの鉛釉陶器、瓦・磚・陶棺などの鉛釉器物、そして鉛釉生産関連遺物などである。 今年度は、従前から行っているガラス製品や硯などや硯などの出土資料の補足調査を行うとともに、日本・韓国出土の鉛釉陶器の一部についても資料収集・検討を加え、データベース化に向けての資料整理を行った。 その結果、古代日本・韓国では、関連資料の共通点として、ガラス坩堝などのガラス生産関係の遺物に形態的な類似性が認められること、鉛釉陶器の一つで硯についての施釉率が極めて低いこと、施釉瓦の使用状況に類似性が認められることの3点、相違点としては鉛釉陶器の器種が異なることの1点に整理できた。 この整理結果は、ガラス生産技術の源流となる隋や唐からの技術の受容や各々の国内での技術改新などの差異を反映しているものと想定される。
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