遺跡情報の記述を解析するのにあたり、まず、所属研究所が刊行した発掘調査報告書のひとつを題材にして遺跡、遺構、遺物などに関する記述を、形式面と意味の面から分析した。その過程で、意味に深くかかわる術語の表現方法にゆらぎがあることが明らかになった。ゆらぎ自体は表現の幅を広げる側面もあり、一概に排斥できるものではないが、機械的に意味の切り出す作業においては、事前に十分な検討を必要とする。術語自体に幅があるだけではなく、名詞と形容詞の組み合わせ方にいろいろなやり方がある点などが、単純な解析を困難にするものと考えられる。この問題については、さらに数多くの文献で検討することとともに、学史的にみて重要な代表的文献での詳細な分析が必要であり、その点は次年度の課題である。 一般的な遺跡情報の記述について、諸外国の実例を調査するとともに、考古学以外の分野における情報の記述に関する調査も行った。図書情報の記述、博物館資料の記述に関する標準化動向を調査し、地理情報標準についても分析を行っている。インターネット上での検索を効率的に進める目的で提示されている様々な標準についても、適用の可能性の検討を行った。 また、地図情報標準に関連して、遺跡の表現に用いられる遺構図などについて、その表現法の構造の解析を試みている。一般的な遺構図の構造を明らかにすれば、情報交換のための標準を提示できるのではないかという見通しを得ている。
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