研究概要 |
1.中四国では,高知県岡富城・浦戸城受法寺・高知城伝下屋敷,香川県高松城,山口県萩城、島根県松江城、広島県厳島神社千畳閣などの瓦調査をおこない織豊期の瓦生産の変化を追った。高知県では岡豊城で天正三年泉州銘の瓦,吸江庵で天正十六年四天王寺之住人の銘、浦戸城受法寺で文禄四年泉州大鳥郡深井の銘があり,また浦戸城は堺環濠都市遺跡の瓦と同笵,高知城伝下屋敷跡は四天王寺元三大師堂と同笵であることを確認した。高松城では岡山城と同笵の瓦の確認のほか,高松城第1期(1588〜1610)の瓦を,さらに小3期に細分できる手がかりをえた。萩城では,現資料享保十八年堺瓦屋鬼四郎兵衛の銘が最古であるが,軒平瓦の文様・技法から境下田亦三郎の軒平瓦を貞享二年(1685)萩大地震後の修築瓦であると考えた。 2.分析途中ではあるが、全国の近世瓦を現時点で編年・細分してみた。中世末期(1500〜1575)、近世工期(1575〜1582)、近世II期(1582〜1591)、近世III期(1592〜1615)、近世IV期(1615〜1657)、近世V期(1657〜1682)、近世VI期(1682〜1724),近世VII期(1724〜1765)、近世VIII期(1765〜1800)に細分した。 江戸の前期瓦については,慶長期、寛永期、寛文・延宝期に編年、また瓦の銘文にみえる奈良衆と四天王寺住人についても分析を加え,安土城の瓦は「四天王寺系」か「姫路系」で「大和系」の瓦でありえないこと,また大阪の瓦屋で最も巨大な組織であった御用瓦師寺嶋氏の製品について分析をおこなった。
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