(1)図書寮本類聚名義抄の翻字本文の作成のための仕様をほほ固めた。特にJIS漢字に無い文字の扱いは、「包摂と分離-多漢字文献翻刻の問題-」と題して情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会で報告したが、コンピュータで使える漢字が飛躍的に増加している現段階において、新字体、旧字体、原文のままの字体のいずれに重点を置くのがよいかを検討した。技術的にはいずれも可能であるが、原文の字体をいったん通行の活字体に翻字し、それに近い新字体か旧字体をとるのがよいとの結論を出した。また、これに関連して「コーパスによる文字の研究」に現状と問題点を整理した。 (2)図書寮本類聚名義抄の翻字本文の作成は全体の二分の一の分量について、一次入力が終了した。翻字本文の作成方針がほぼ固まったので、今後の翻字本文の作成のペースは上がるものと期待している。 (3)官内庁書寮部にて原本調査の機会を与えられ、カラー写真を入手することも出来た。これは大きな成果であった。原本調査とカラー写真によって、従来の複製本では不明瞭だった点を検討することが出来たのである。カラー写真を翻字本文の作成に活用することが可能となった。 (4)図書寮本類聚名義抄の原典資料の一つである真興の大般若経音訓について、その逸文を大量に有する叡山文庫息心抄の原本調査を実施し、逸文をすべて抜き出して翻字本文を作成した。 (5)図書寮本類聚名義抄の注解については、どのような方針で行うかをほぼ固めた。若干の項目について、翻字本文と注解を作成した。
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