『祝本狂言集』について、語法・用語の比較を行いその結果を論文として発表した。 また、狂言記の完成したリストをもとに、補助者の協力を得て版本狂言記全二百番の曲の分類をパソコン上で行った。複雑な表の形であらわれたものから、各曲の伝承関係・固定化の程度を加味して、意味のある分類表として整理している。その一部は報告書に資料として示した。 その成果として雑誌『日本語学』の「近代日本語研究」特集号に、狂言資料全般と版本狂言記の近世・近代語研究からみた資料的位置づけについて論文を書く機会を得たので、「おまへ」という代名詞を例にふれて述べた。こうした考察を通じて、二百番全てをきれいに整理することよりも、特徴的な曲を取り出して位置づけることが可能ではないかという見通しを得た。そこで大蔵流や和泉流と類似する曲について位置づけを試みたのが「狂言記研究の構想」(現在印刷中)である。 版本調査の過程で、正篇や外篇の版本を資料として新たに入手することが出来た。また基礎資料として語彙対照表(正篇/外篇)を作成したが、その一部を報告書に資料として示した。このもととなった正篇・外篇の電子化した索引も含めて、今後どのように公開し活用していくかについては検討中である。
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