抄物は室町時代口語研究資料として価値が高い。本研究は、筆者未調査の抄物の発掘・調査を行い、既調査抄物と合わせて、その総合目録の完成に努めたものである。 1、現地調査 国立国会図書館・東京国立博物館・お茶の水図書館・国立公文書館内閣文庫・宮内庁書陵部・歴史民俗博物館・静嘉堂文庫・防衛大学校図書館・名古屋市立蓬左文庫・京都大学附属図書館・花園大学国際禅学研究所・天理大学附属天理図書館・阪本龍門文庫・高野山霊宝館・西来寺等において抄物の発掘・調査を行った。特に、閲覧業務が再開された抄物の宝庫の一であるお茶の水図書館の調査に力を注ぎ、写本・古活字版・整版にわたって多くの抄物を調査し得た。 2、書誌学的考察 各抄物の、抄者、成立時期、言語研究資料としての性格等の資料性の解開に努めた。中でも『三体詩素隠抄』と『中華若木詩抄』等を中心とする古活字版の整備と諸版の関係の解明とに、大きな成果を得た。後者についてはお茶の水図書館において「出版された抄物-室町時代の話し言葉を探る-」という題で研究発表を行った。 3、昌録の作成 (1)特定の原典に対する抄物、(2)書き入れ仮名抄、(3)特定の原典を持たない一種の抄物、に大きく三分し、目録の作成を進めた。そのうち(1)の漢籍集部の目録を完成し、『訓点語と訓点資料』(2004・9)に発表した。
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