研究課題
基盤研究(C)
1、平曲譜から近世京都アクセントの型を認定する場合の手続きを明らかにした。2、とくに1拍名詞について、平曲の譜記とアクセントとの関係を明らかにした。3、2拍名詞における助詞「の」接続形のアクセントは、いわゆる第二類名詞の場合と第三類名詞の場合とで、平曲譜には異なるあらわれ方をすることを明らかにした。4、『平家正節』の譜記にみえる「特殊低起式表記」は、いくつかの類型に大別できることを明らかにした。5、『平家正節』所載の名乗のアクセントについては、過去の京都アクセントにおける変化を多数型への類推と型の統合という観点から説明できることを明らかにした。6、現代における名乗アクセント(H0型とH1型)のうちのH1型は『平家正節』の譜記から知られる近世京都のそれとは異質なもので、前者は現代の基本型の一つであるのに対して、後者は古い時代のLLHL型などからの変化形であることを推定した。7、平曲古譜本の譜記と近世京都アクセントとの関係について、筑波大学本・也有本・正節本・正節本、また波多野流譜本(京大本)の譜記は、相互の対応が著しく、概略近世京都アクセントを反映するものと見なせるものと推定した。8、江戸前田流の吟譜系譜本の場合も、とくに筑波大学本の譜記との対応が顕著であることを明らかにした。これに対して江戸前田流譜本とされる所謂「豊川本」(演博本)の譜記はこれにやや劣り、むしろ正節本に近い。また金田一春彦蔵『平家書』の譜記はアクセントとの対応が認めづらく、なお研究を重ねる必要がある。
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