本年度は『方言文法地図』の中から(1)接続条件法、(2)格助詞ノガを中心とするものの考察を行った。 (1)のうち原因・理由をあらわす「雨が降っているから〜」その他、の地図の解釈と近世期を中心とする方言文献との対照的な研究は原稿が出来あがり、審査のある学会誌に投稿中である。これは前年の継続の結果であるが、本年度は同じく上記の地図と方言文献との対照により、新たに接続条件法を体系的な見地から確定・仮定条件の地図類をとりあげて考察した。その結果、投稿中の必然確定の分布および歴史はかなり複雑であるが、他の条件法は分布が似かより、歴史的な経緯も足並みをそろえたものであることが分かってきた。両者の差異の起因についてはまだよく分からない。 (2)については、数葉の地図の解釈を試みているが、どの地図も分布はよく似るものの飛び地や不連続的な分布が目立ち、特殊な地域性を加味した解釈が必要と思われ、難渋している。文献での情報も得られにくい。地方的な方言文献も探し、仙台、山形、小浜、庄内などに出かけたが、目だった成果は得られなかった。 (3)本研究の副産物として、福島県北部の方言文献『広八日記』の音韻についての論をなした。これは印刷中である。 以上のような解釈をさらにつみかさねて、来年度は分布類型の整理にも取り掛かりたい。
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