研究概要 |
全国の重点的調査地点において,老年層・若年層の談話を収録・文字化した「談話資料」を作成し,そこに現れる方言コードの記述と比較を行うことによって,方言コードの出現と変容の実態を明らかにすることを目的としている。 一個人の中には,方言コード,共通語コードを含め,さまざまなコードが存在する。方言コードは,かつては,ある地域で行われるひとつの言語体系(システム)であると考えられてきたが,現在では,場面に応じて使い分けられる文体(スタイル)へと変化しつつあるととらえられている。地域・話し相手・状況・話題などの違いによって方言コードがどのように出現するのか,方言コードと標準語コードの切り替えがどのように行われるのか,などについて,研究代表者・分担者のこれまでの研究成果や,既存の談話資料,調査報告などを参考に,社会状況の違いによる方言の変容の程度について仮説をたて,重点的に調査を行う地点を選定した。 また,老年層話者に見られるような伝統的方言が,若年層話者においては急速に失われていることについては多くの報告があるが,標準語コードのみになるのではなく,従来の伝統的方言とは異なる新しいローカルスピーチスタイル(ネオ方言)が観察される。このネオ方言コードにかかわっていると考えられる,標準語や東京方言・関西方言の干渉に焦点をあてて,各地の方言コードの変容について分析を行うことを前提に,大都市方言のスピーチスタイルを明らかにするためのケーススタディとして,大阪の老年層・若年層の自然談話についての観察を実施した。
|