本研究期間内の研究成果は下記の通りである。 1 尾崎家本『平家正節』の翻刻。『平家物語』の卷第五から卷第八まで終了。 2 甲南女子大学本『平家物語』の翻刻。卷第三「頼豪」から卷第五「伊豆院宣」まで終了。 3 平曲譜本の閲覧調査。(1)韓国Seoul大学校所蔵本。-旧京城帝國大学所蔵本・波多野流譜本。(2)黒部市・宮崎文庫記念館所蔵本。-「平家吟譜」の全巻と判定。(3)下関市・赤間神宮所蔵本-波多野流譜本。(4)高橋貞-旧蔵・貞享四年書写本。-年記の明確な譜本のうち最古のもの。 4 平家物語の閲覧調査。(1)アメリカ合衆国Yale大学所蔵本。-長門本と判定。 5 當道資料の閲覧調査。(1)アメリカ合衆国Yale大学所蔵本。-四宮殿傳記・當道拾要録・當道大記録・當道要集の4資料の合冊と判定。(2)京都市歴史資料館保管・奥村家文書-當道資料の他、平曲譜本数点、八坂流平家物語等。-大学堂書店刊行の資料集の不備を補うことが出来た。 6 平曲譜本ならびに平家物語の新出資料紹介。(1)宮崎文庫記念館蔵『平家物語』12冊を「平家吟譜」と判定して紹介。(2)イェール大学蔵『平家物語』12冊を長門本と判定して紹介。 7 當道資料の全文翻刻紹介。(1)鈴木孝庸蔵『當道略記』-影印も併載。(2)新潟大学蔵『當道拾要録』。(3)イェール大学蔵『四宮殿傳記』。 8 平家琵琶伝承者・橋本敏江よりの伝授。-平曲の実技伝授を昭和55年から継続して得ていたが、(1)平曲の通常の曲・平物(ひらもの)は、平成14年に修了。(2)秘伝の曲のうち・読物(よみもの)「腰越」の伝授を平成17年に得た。 9 平家物語と平曲の関係についての知見。(1)平家物語誕生期の同時代の音楽的文藝との関係-今様の形は尊重されているが、朗詠は変形させられている。(2)平曲の曲節の中では、「口説(くどき)」と共に「中音(ちゅうおん)」が、文学的な世界全体を支える重要な働きを持っている。
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