浄土宗名越派の中心的寺院であった如来寺(いわき市平山崎字矢ノ目)の聖教調査を4・6・8・10・12・2月の6回、計14日間行った。如来寺の聖教は2度にわたる水害を受けたために、約3000冊の本が入り交じり、未整理のまま収められていた。書誌カードをもとに外題・内題・柱題・尾題をパソコンに打ち込んでソートをかけ、蔵本の整理を行った結果、聖教全体の点数が、約1300点であることが判明した。次に書誌カードの見直し作業に入り、蔵書の3割の見直しを終えた。書誌カードの見直し作業の終了まで、あと1年半ほどかかる見通しである。書誌カードの見直しが終わり次第、パソコンへのデータ入力をおこなう予定でいる。 室町時代後期以降、名越派の本山であった専称寺の聖教予備調査は8月におこなった。現在、専称寺に残されている聖教が江戸時代以降の版本が中心であることを確認した。 如来寺蔵書の整理・書誌カード見直し作業、専称寺蔵書の予備調査と平行して、戦国期の学侶である良定(袋中)の著作物の確認作業に入った。名越派の聖教を把握していく上で、良定の著したおびただしい作品群の解析が必要と考えられるからである。良定の著作物の確認作業は、如来寺と同様に多数の聖教を蔵する檀王法林寺(京都市左京区三条)の聖教調査に入るための準備作業でもある。なぜなら、檀王法林寺は、良定が中興し、多くの著作物を収めた寺院だからである。良定の著作の確認作業の成果の一端を4月27日、説話文学会例会において「袋中の本箱」の題で発表し、その後、さらに確認作業を続けた結果、良定が名越派の五重相伝を作り上げた人物であることの確証を得た。その成果は、論文「袋中の本箱」として『説話文学研究』38号に掲載予定である、(入稿済み)。
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