浄土宗名越派の中心的寺院であった如来寺(いわき市平山崎字矢ノ目)の聖教調査は、4・6・8・10・12・2月の5回、計19日間行った。8月の調査で書誌カードの見直し作業を完了した。10月の調査以降、再度の見直し作業を兼ねて、パソコンへのデータ入力を行い、全体の3割の作業を終えた。 室町時代後期以降、名越派の本山であった専称寺の聖教予備調査は8月に行った。専称寺に残されている聖教の内、如来寺聖教と重複する典籍の確認作業を行った。 専称寺に残される真言宗の行法書との関係を明らかにするため、いわき市内の真言宗寺院である宝聚院(いわき市西小川)の調査を、5・7・9・11・3月の5回、計10日間行った。調査の過程で、宝聚院の聖教中に、浄土宗名越・白旗両派の相伝許可状『五重相伝』『布薩戒血脈』を発見し、書誌調査などを行った。 檀王法林寺の調査は、9月に2日間行った。如来寺蔵『三語集』(戦国期末成立。説草集)の編者、如来寺十三世良要(良定の伯父)の甥であり弟子でもある良定(袋中)関係の典籍調査を行い、『枕中書』の書誌調査と画像データの収集作業を行った。名越派内における書物の伝播の状況を窺うため、良要、良定の著書内における共通の言説の確認作業を行った。成果の一部は、17年度中世文学会50周年シンポジウム(5月28日)において、「地域寺院と資料学」と題し発表することが決まっている。 なお、『三語集』の注釈作業については、16年度は、全九十九話のうち二十話(15年度と併せて四十三話)に、語釈、口語訳、解説などを施した。
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