平成15年度は、明治32年の「巖谷小波日記」及び「手帳」「俳句ノート」の翻刻と注釈を行い、このうち「手帳」の翻刻を白百合女子大学言語・文学研究センター「言語・文学研究論集」第4号に発表した。また、「日記」の翻刻と注釈も平成16年度「白百合女子大学児童文化研究センター論文集」IX号に発表する予定である。後者は平成15年度の同誌VIII号に発表予定であったが、児童文化研究センターの都合により掲載を断念せざるをえなかった。「俳句ノート」についても、平成16年度中に発表できるように努めたい。この年の小波は数え30歳である。1月は博文館より『世界のお伽噺』シリーズの第一編『世界の始』を刊行。また10月には妻・勇子と水口町山村家や京阪方面に旅行している。これら小波の事跡を日記本文の初めの翻刻として明らかにするとともに、日記を通した同時代の状況を注釈によって追求した。 また、前年度に引き続き継続的な研究のための資料の整理、拡充にも努めた。(1)最新のパソコンを購入することによって、すでに電子ファイル化した「巖谷小波日記」の効率的な検索が可能になり、注釈に必須のレファレンス作業が従来よりも迅速かつ精確に行えるようになった。(2)お伽噺の口演をした巖谷小波の足跡は全国に及び、書家である父・一六の事跡や小波の句碑の存在なども視野に置くと、日記の注釈には実地調査とヴィジュアルな記録も欠かさない。今年度は京都霊山の法正寺にて巖谷家の墓所を確認、記録するなど、いくつかの足跡を辿ることができた。(3)小波関係の図書・雑誌を収集した。これらは今年度のみならず、今後の「巖谷小波日記」の基礎的な資料として活用されるものである。科学研究費補助金による研究期間は終了するが、今後も継続して本研究を進めたい。
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