金沢市立図書館・国立国会図書館・国立公文書館内閣文庫・彰考館徳川美術館・国文学研究資料館・東北大学図書館・大阪府立中之島図書館を中心に、すでに入手した資料も含めて、菅原道真の漢詩文集である『菅家文草』『菅家後集』の写本・版本類を調査・研究した。とりわけ研究の基盤となる本文整備・校訂に力をそそぎ、校訂本文を作る作業を続け、『菅家後集』については完成した。これらの基礎研究に立脚して、研究完成年度の今年度までに、これまでの諸説との比較研究を中心に据えて、従来の研究との相違をいくつか呈示することができたかと思う。そのために、論文収集にも力を入れて新見を呈示するように努めた。また、太宰府周辺や讃岐国分寺跡・讃岐国庁跡及び周辺の天満天神など道真関係の遺跡等の実地踏査を行った。菅原道真自身が詠んだ漢詩から、道真の実像が浮かびあがるように努力したつもりである。また、論文の発表では、『菅家後集』の注釈を鋭意続け完成に近づけた。交付を受けた期間に発表した注釈箇所は、四七七番「詠_二楽天北窓三友_一詩」から始まり、四八四番「叙意一百韻」の途中までを扱った。『源氏物語』『大鏡』などの作品や類似の内容を扱った作品など、後世への影響も含めて、一つの作品を幅広い視点から考察することに心がけた。さらに、東京大学教養学部美術館や京都国立博物館、奈良国立博物館、国立歴史民俗博物館、五島美術館、出光美術館、東京国立博物館などでの展観書目や美術作品を見ることによって、道真の漢詩やその周辺の作品、拠っている参考文献などの理解を深めることができた。
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