平安時代中期における屏風詩歌資料集を作成した。勅撰集・私撰集・私家集・日記などに散在している屏風詩歌を集成し、整理を行ったのである。ただし、詩の資料はごくわずかであるので、ほとんどが屏風歌である。また、屏風詩歌ではないが、歌絵などの絵に詠み合わされた歌もできるだけ集成した。この資料集は今後の屏風歌研究に大きく寄与するものとなろう。 その内訳は、古今集時代については、成立年代や成立事情が判明するものが74種類あり、その総詩歌数は709首であった。成立年代や成立事情が不明であるものは、10種類35首であった。後撰集時代については、判明するものが41種類684首、不明であるものは39種254首である。拾遺集時代については、判明するものが7種類176首、不明であるものは37種類106首である。 以上のような状況の三つの時代を通覧した結果、おおまかに以下のことが指摘できる。これらは、屏風歌の歴史を考える上で、今後重要な指標となるだろう。 1、屏風に歌を押すことがもっとも頻繁に行われたのは、古今集時代である。 2、一つの屏風について歌を推す場面数が増えたのは、後撰集時代である。 3、一つの屏風について複数の歌人に詠歌させることが増えたのも、やはり後撰集時代である。つまり、後撰集時代に屏風の大規模化が進んだのである。 4、屏風に歌を押すことが激減したのは、拾遺集時代である。 5、拾遺集時代の屏風は、大規模なものが多い。つまり、拾遺集時代には大規模な屏風がごく少数、制作されたのである。 6、拾遺集時代の屏風のほとんどに、藤原道長が関わっており、道長が目的をもって積極的に屏風歌に関わったものと思われる。
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