江戸時代から現代までの子どもの読み物における英勇譚の系譜の中で、今年度は下記の3点について成果を上げた。 1.幕末・明治期の豆本における武者物の資料整理と作品分析 2.読本『南総里見八犬伝』の子ども読み物への影響に関する資料整理と考察 3.上方絵本における武者絵本の状況 1.は昨年度に引き続き豆本全体の資料整理・分類を行い、その成果は拙稿「幕末・明治の豆本・絵双六-近世から近代へ-」や拙著『幕末・明治豆本集成』にまとめたが、その中の武者物の7作品に関する分析・考察、ならびに拙稿「豆本『大将揃』について」が本研究の直接の成果である。 2.は読本『南総里見八犬伝』の児童文学への影響を関連資料の収集・整理・分析をもとに考察したもので、梅花女子大学・梅花短期大学図書館所蔵『南総里見八犬伝』の展示目録・関連講演ならびに拙稿「江戸時代のベストセラー『南総里見八犬伝』-児童文学への影響を含めて-」にまとめた。 以上の成果から、江戸時代から現代までの子どもの読み物、特に絵本における武者を中心とする英雄譚は、人物・逸話・絵柄共に継承し続けた部分はあるものの特にその人物のものの考え方や心情の捉え方に明治後半以降にそれまでとは異なる部分が生じ始めたことが推測される。 なお、3.は梅花女子大学大学院博士前期課程在籍の柴田みなこ氏の研究テーマであり、昨年度に引き続き資料調査とその分析について指導教員として関わってきた。その結果は柴田氏の修士論文として結実し、平成16年2月に提出され、修士号を授与された。
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