1.日本において補陀落観念の受容の基盤となった古代の常世信仰について、古代文献の用例の検討や従来の研究をふまえて古代日本における「常世」思想を明らかにし、特に常世と補陀落の習合の要因・様相を解明した。 2.日本・中国・朝鮮・インド・チベットの補陀落・補陀落信仰・観音信仰にかかわる多くの論文・単行本を収集した。それらを得るために各地の公立図書館・国立国会図書館・大阪府立図書館・神戸市立図書館・京都大学附属図書館などに赴き、また現地でも収集に努めた。 3.日本・アジア各地の補陀落と伝承される地、および補陀落渡海伝承地を実地調査し、研究した。 過去4年間に実地調査した場所・地域は以下のとおりである。 (日本国内)東京都・浅草寺、栃木県日光市、長崎県島原半島、熊本県玉名市、鹿児島県鹿児島市・隼人町など、宮崎県青島など、茨城県日立市、和歌山県・那智を中心に県内各所、沖縄県金武町など (アジア各地)韓国・洛山、韓国・済州島、中国・普陀山、インド南部、チベット・ラサ 4.補陀落信仰の成立と伝播、また各地の補陀洛の成立について、歴史的考察を加えた。 5.補陀落信仰の分析を、補陀落観念を分類することによって、また自然相・太陽信仰や龍神信仰との習合を考察することによって行った。 6.その他、補陀洛信仰の諸相について次のような研究を行い、成果を得た。 (1)日本における補陀落渡海の歴史の再検討 (2)補陀落渡海行者、日秀上人の研究 (3)「湯島」についての研究
|