研究概要 |
「武家文化圏で製作された古往来」として、本年度の主な仕事としては、次のようであった。 1,『異制庭訓往来』の本文校合作業の内、懸案として残っていた陽明文庫本を終えた。 これによって、話題別物品一覧表の異本校合表を完成した。 2,これまで考察してきた『新撰遊覚往来』と『異制庭訓往来』との比較作業に『庭訓往来』を加えて、話題の有無、扱い方の違いについて考察した。 また、『新撰遊覚往来』にはない話題、即ち、『異制庭訓往来』に登場し、『庭訓往来』に引き継がれた、武家文化に特有と予測される話題について、品物の固有名詞等を中心に、分布の状況を調査中である。 3,武家文化圏の価値観の把握に難渋していて、本年度は、中世前期の武家家訓・『関東御成敗式目』等、近接した資料の状況を調査した。 武家文化圏の価値観については、予想外に幅が大きい。それが、個人差なのか、時代差なのか、また、地域差なのか測りかねている状況である。『新札往来』のように、京中で僧侶が書いたことが知られる作品もあるが、一方で、『十三湊往来』『十三湊新城記』のように、地方都市在住者の手になると推測される物もある。今少し、背景の調査に時間をかけたい。
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