1.中世朝廷儀式・饗宴年表と文献資料一覧の作成 平安時代後期より室町時代後期まで、ほぼ五百年間にわたる、即位・行幸・算賀・法会・歌会・蹴鞠など主な宮廷儀式・饗宴を整理し、これに関する文献資料・絵画資料の存在を調査した。その研究成果の一部として、『南北朝の宮廷誌-二条良基の仮名日記』(臨川書店、平成15年2月)を刊行し附録として「中世廷臣の仮名日記一覧」を作成した。これによりこのジャンルの作品を一覧することが可能になった。 2.宮廷行事仮名日記の諸伝本調査 1.の作業を経て、男性貴族の執筆にかかる仮名日記の諸本調査に着手した。流布本の誤りを訂正し得る善本が、多くの作品について未紹介である現状が明らかになった。まずは二条良基の仮名日記についての研究を進め、「『陽禄門院三十三回忌の記』について-東山御文庫蔵本の紹介と翻刻」(『古典資料研究』第4号、平成14年6月)、「二条良基と蹴鞠-『衣かづきの日記』を中心に」(『室町時代研究』第1号、平成14年12月)の二論文を発表した。また、こうした作品の伝本を多く所蔵する宮内庁書陵部・国立歴史民俗博物館・東京大学史料編纂所に度々赴き、写本の書誌学的調査を行った。必要に応じ紙焼写真を購入した。今年度は宮内庁書陵部蔵管見記(西園寺家伝来の典籍)、国立歴史民俗博物館蔵廣橋家旧蔵記録文書典籍類という二つのコレクションから、あわせて160点ほどの典籍の紙焼写真を購入した。 3.北山准后九十賀記の研究 鎌倉時代を通じて最大の宮廷の賀宴である、北山准后(藤原貞子)の九十賀(弘安10・1285年)に関する記録を研究した。『実冬卿記』『実躬卿記』などの漢文日記、文学作品である『とはずがたり』『増鏡』のほか、実際に御賀に楽人として参仕した中御門宗冬(?〜1311)の日記、東山御文庫蔵『宗冬卿記』を新たに見出し、上記の記録日記類と比較対照の上、全文を紹介・翻刻した。この研究成果は、論文「北山准后九十賀とその記録-東山御文庫蔵『准后貞子九十賀記(宗冬卿記)』の紹介」(『明月記研究』第7号平成14年12月)に発表した。
|