(1)中世朝廷儀式・饗宴年表と文献・絵画資料所在一覧の作成 前年度の作業に引き続き、平安時代後期から室町時代後期に至る期間の、即位.・行幸・算賀・法会・歌会・蹴鞠など主な宮廷儀式・饗宴に関する文献資料・絵画資料について調査した。その成果の一部は既に『南北朝の宮廷誌』(臨川書店 2003年2月)の附録として刊行しており、その拾遺である。 この結果、これまで存在の知られていない作品、あるいは重要な伝本が見出された。宮内庁書陵部蔵『管見記』に含まれる『延徳御八講記』の室町期写本、国立歴史民俗博物館蔵廣橋守光筆の『相国寺塔供養記』などであり、いずれも紙焼写真を購入した。これらの本文を活字翻刻し提供する用意を進めた。 (2)南北朝期の仮名日記のテキスト・データ化 (1)の成果を踏まえて仮名日記の本文批判を行い、校訂本文を制定した。これをコンピュータに入力しテキスト・データ化した。今年度は『舞御覧記』『わくらばの日記』『相国寺塔供養記』『北山殿行幸記』『応永大嘗会記』『雲井の春』『春日社参記』『延徳御八講記』等、主に室町時代の宮廷行事に関する他の男性貴族の仮名日記12篇(約15万字)をデータ化した。 (3)源通親日記(『高倉院厳島御幸記』)の研究 源通親(1149〜1202)の仮名日記は、彼が最も親しく仕えた高倉上皇の初度御幸、そして崩御という二つの大きな行事を扱い、このジャンルの嚆矢というべき重要な作品とされている。この日記について、諸本・成立など基礎的な問題を考察し、明月記研究会(平成15年8月29日)で発表した。その結果、最古写本の梅沢記念館本は鎌倉中期の書写であり、作品本文もまたその時期に原形本に大幅に改変されて成立していること、通親が作者であるとの通説にも再検討の余地があることが分かった。その成果は『明月記研究』9号(平成16年12月刊行)に掲載する予定である。
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