本研究の目的は、史・資料として遺された近世から近代にかけての版本・錦絵・古文書を対象に、材質および特性を明らかにして、科学的類別を行うことにある。 本研究は、史料として遺された紙資料群を対象に、材質および特性を明らかにして、科学的類別を行うことにある。そのため、顕微レンズを用いた測定装置(CCD拡大画像)により紙質測定の技術に関する研究、加えて、史料への影響を最小限にとどめた調査により、紙の特質をどこまで把握できるか、紙質画像を入力して比較する研究を継続して行った。昨年度は『手漉和紙』を標本として、各種の科学的調査と調査技術の検討を行ったが、今年度は実際の史料に用いられた資料の科学的類別のための調査を、下記の1〜3を対象として開始した。 1.版本の場合、実際的に江戸版の紙質を出版元や年代ごとに分析を行い、紙質の特徴を調査した。 2.錦絵の場合、明和初年の錦絵期になると色版を摺り重ねるため、耐久性のある奉書紙を用いるようになる。錦絵に用いられた紙質を比較検討し、識別の指針となる紙質情報を調査した。 3.古文書については、その原料、抄紙・色・用途・産地等によって、檀紙・奉書紙等々様々な名称が付されている。また、文書の発給者や使用者文書料紙が使い分けによるその相違は史料の発生と機能を研究する上で、重要な手掛かりとなるものである。各紙質についての分析を行い、版本・錦絵の紙質データと比較検討し、(1)〜(3)の紙質の特質を調査した。 科学的調査を調書としてまとめるため、データシートのフォームを整理し、データをパソコンを使用して入力し、処理する作業を実施した。最終年度、測定結果から紙質の特定パターンを整理した「紙質類別基準試案」のデータの累積と分析の成果を報告書としてまとめた。
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