本研究は江戸期における詩経研究の実態を明らかにするべくその基礎的な調査として、邦人による詩経関係の著述を総合的に整理分類した「江戸期における詩経関係書目」等の作成と重要文献の解題作成を主たる目的として進められている。本年度はその二年目として次のことを行った。 1 前年度にその概観を見るために作成した暫定目録をもとに、重要文献の実地調査を行った。また重要文献の複写も順次行った。この過程で新たな重要文献の発見も多数あり、ほぼ目録の完成に近づきつつある。また実地調査等で得られた情報などをもとに分類作業を行い、暫定版の書名の五十音順を分類に整理し直して江戸期の詩経研究のありようを鳥瞰できるようにし公表した。今後さらに修訂し来年度の完成を目指す。データはすべて電子化している。 2 上記の目録のほか、本年度は「江戸期における詩経関係和刻本目録」の暫定版のデータも公表した。さらに本年度、その完成に向けた現物調査を行った。目録著録の和刻本は思いのほか多数にわたり、刊行年や新注、古注の別などの情報をもとに当時の詩経研究や儒教研究の様相を知る大きな手がかりができたものと思う。 3 現物調査に当たり重要と思われる文献は複写したが、これらを元に重要文献について順次、解題作成を行った。発表雑誌の紙幅の関係で公開したものは岡井赤城の「詩疑」の研究のみとなったが、順次他の解題も蓄積されてきている。これらを通して江戸期の詩経研究が中国のそれと密接に関わりながらも、中国での研究に先立って先進的な研究も生まれてきていることなどが確認された。今後、本格的に行う「江戸期における詩経学」の研究の大きな足がかりとなるであろう。
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