研究課題/領域番号 |
14510505
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 たかね 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10168354)
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研究分担者 |
萩原 裕子 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (20172835)
杉岡 洋子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (00187650)
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キーワード | 語形成 / メンタルレキシコン / 失文法失語 / 二重メカニズムモデル / 使役構文 |
研究概要 |
語形成に関わる心的・脳内メカニズムを解明するために、二重メカニズムモデルを作業仮説とした実証研究を行った。 本年度は使役動詞に焦点をあて、生産性の高い-sase使役(「並ばせる」)と、語彙的な性質を強くもつ語彙的使役(「並べる」)が、どのような心的・脳内メカニズムを用いているかの検討を行った。本研究従事者によるこれまでの共同研究(Sugioka et al. 2001)では、失文法症状の患者について、-sase使役の方が語彙的使役よりも、産出・理解に困難を伴うが、同時に語彙的使役が単純他動詞(「たたく」)よりも成績が悪いことも明らかになっている。二重メカニズムモデルでは、語彙的使役と単純他動詞との違いが予測されないため、この相違の原因を探るための実験を開始した。具体的には、失文法患者を対象に語彙的使役(「太郎が花子をプールに沈めた」)と単純3項動詞(「太郎が花子に本をあげた」)の産出・理解実験を行うことにより、Sugioka et alに報告された「並べる」と「たたく」の差が、項の数の違い(前者は3項、後者は2項)によるものである可能性を検討している。現段階では被験者数が少なく、結論を下すことはできないが、項の数に関わらず使役動詞(「並べる」)の方が単純動詞(「たたく、あげる」)よりも成績が悪い傾向が見られる。つまり、失文法患者の成績は、単純2/3項動詞>語彙的使役>-sase使役という3段階の相違を見せることになり、この結果は、演算と連想記憶という2つのメカニズムだけで語形成を説明することができない可能性を示唆すると思われる。 なお、本年度は、これまでの本研究従事者の共同研究の成果をまとめ、日本英語学会20周年記念大会におけるシンポジウム「言語の認知脳科学--現状と展望--」で発表を行った。
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