研究課題
基盤研究(C)
ヨーロッパの辺境と呼ぶべきふたつの土地、アイルランドとロシアでそれぞれ生を受けたふたりの文学者、ジェイムズ・ジョイスとヴラジーミル・ナボコフの接点を端緒としつつ、これらの代表的存在によって究極的に体現された、いわゆるモダニズムなるものの特性について考察した。啓蒙主義以降における現代性の概念は、文化の諸領域の自律性という観念にささえられてきた。それをささえていたもうひとつのものは、自律性の発展ならびに徹底の過程として定義づけ得る進歩という観念であった。しかし他方においては、一般にモダニズムと称される藝術様式が誕生した場は、現代性という概念の成立条件には恵まれていないヨーロッパの辺境であることがしばしばだったのである。越境あるいは境界横断が創造の契機となるという一般的な意味合いからすれば、ロンドン、パリ、あるいはベルリーンといったモダニズム藝術の中心地は、じつは、移動と離合集散の経過点にすぎなかったということにもなるだろう。また、ナボコフの作品(たとえば『暗闇のなかの笑い』)が実例となっているように、文学的テクストが映画という最尖端の映像表現手段から刺戟を受け、その技法を積極的に取り入れるようになってくるという事態にも注目しておく必要があるだろう。このような異種混淆性は、20世紀の文化現象全般をつうじてますます目立ってゆくことになるものだからである。1920年代の英語圏文化が探偵小説という特異なジャンルによって顕著なまでにしるしづけられたものであることもまた、ナボコフの作品によって照射されていることは特筆に価する。1920年代における哲学的思索の結実の代表例であるアンリ・ベルクソンの著書が、ナボコフの虚構テクストの重要な源泉となっていることも指摘しておかなければならない。
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東京外国語大学論集 第70号
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ページ: 413-415
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東京外国語大学論集 第65号
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東京外国語大学論集 第66号
Area and Culture Studies 65
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