研究概要 |
実施計画書にも述べたとおり、今年度は異文化背景を色濃く反映している作品を扱うこととし、インド北部パンジャブ地方が源のバングラ音楽と文学の関係について研究した。バングラ音楽は、今年度Glastonburry音楽祭など著名なポピュラー音楽の祭典に登場して、イギリスのポピュラー音楽界に台頭し、メディアでも大々的に取り上げられたので、タイムリーな研究課題に取り組めた。バングラ音楽を取り入れた作品として、まずMeera Syalの「Life isn't all Haha, Hehe」の精読から研究を始めた。また、作中にバングラ音楽を取り入れた最も顕著な作品は2002年に封切られた映画『ベッカムに恋して』だったので、当初の計画には入っていなかったが、この映画のスクリプトと挿入音楽の関係を、前述のSyalの作品でのバングラ音楽の扱いや、2000年封切でやはりサッカーと地域社会をテーマとしている映画『シーズン・ティケット』での音楽の扱いと比較した。 精読以外の研究として、今年度はポピュラー音楽会学会や研究会に参加して、主にイスラム圏の現在の音楽事情、西洋ポピュラー音楽と伝統的な聖典等の朗誦の関係について意見交換した。英国NewcastleのNorthern Stageへの海外出張では、移民プロジェクトの担当者より研究方法についてのアドバイスを受けた。移民とイギリス人の若者たちが移民体験をどのように言葉で表現しようとしているのか、そのような交流の手段として音楽はどう位置づけられているか、ということについて、情報収集、意見交換を行った。
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