平成15年度は、1)売春婦更生施設関連の研究と、2)個人の慈善、3)助産婦と母親の関係についての研究を進めた。 1)14年度末の3月末に口頭発表した「18世紀の慈善と売春婦」の論文について、論文集掲載に向けての準備を進めた。口頭発表時には、主に18世紀の分析であったが、夏期休暇中にロンドンでリサーチする機会をもつことができたので、マグダレン・ホスピタル関係の資料やチャペルで行われた説教を出版したものなど19世紀半ばまで広げて研究を進めることができた。18世紀から19世紀への変わり目に大きな変化が起こっていたので、このリサーチは非常に有益であった。18世紀半ばに慈善を立ち上げていった人々が主張した慈善を受ける側の人々像と、慈善活動が定着していった19世紀では、女性観の変化とともに売春婦観が変化していることが明らかになり、慈善を組織する側と慈善を受ける側の関係の変化も指摘した。 2)Georgiana、Countess Spencerの慈善について、夏期休暇中のロンドンでのリサーチで足りないところを補い、論文として発表できるよう準備を進めている。 3)妊娠・出産・育児について、18世紀の男助産婦の出現と流行による女性たちの行動パターンの変化と、現代に至るまでのイギリスの妊婦と助産婦・医師(地域と病院)の出産ケアチームとの関わりに関して、文学的な資料も(を)とりいれながら考察する論文を準備している。 他に、18世紀の文学から集めた資料やスペンサー伯爵夫人の手稿資料の質的分析をすることができるように準備している。
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