研究概要 |
二つのテーマ:1)慈善、2)妊娠・出産・育児、子とのコミュニケーションについて、前年度の成果を引き継ぎ検討した。 1.Georgiana, Countess Spencerの膨大な書簡・日記(未出版マニュスクリプト)を使って彼女が行っていた個人としては大規模な慈善事業をテーマにした論文を完成し、学術雑誌に9月に投稿した。採否の結果待ち。『静岡大学人文論集』の論文は、18世紀の湯治リゾート・バースでのケアの一例を論じたものである。『身体医文化論』の論文は、寄付により賄われた売春婦更生施設の方針と女性観・売春婦観について、18世紀半ばから19世紀におきた変化を論じた。 2.18世紀にイギリスでは男助産婦(man-midwife)が流行し、出産の歴史のなかでも際立った現象として、出産が女性たちの集まりの中に囲まれた体験から階層により差異のある体験となった(富裕な女性たちの選択で男助産婦が流行った)と説明されている。妊娠・出産・育児についての富裕な女性の考え方を考察する論文を準備中である。 他に、19世紀の日本の女医二人についてDictionary of Medical Biography(Greenwood)に執筆した。今年度は、研究補助のための謝金を使用しなかったのは、マイクロフィルムWomen and Medicine : Remedy Books 1533-1865(全35リールのうち12リールを購入した)を購入し、予算の都合上無理になったためである。この資料は、女性がつけていた家計簿や薬などのレシピ・ブックを集めたもので、一家のなかでのケアの担い手としての女性の研究に大いに役立つものと思われる。
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