研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、18世紀の個人の出版されていないマニュスクリプトの資料を核にして、他に文学テキストや出版された歴史資料などを使って、18世紀イギリスの女性の文化的活動と自己認識を考察することであった。社会的大流行でもあり、文学上でも際立った特徴となった「感受性」‘sensibility'の時代といわれる時期に、弱者に対する配慮がケアを与える側・与えられる側双方にとって、どのような意味をもったかという点に関し、1)慈善活動の場で2)母子の関係の上で、というしばしば女性の自己実現の場と位置付けられる分野について注目し、主に慈善についての考察を行った。研究期間中の2003年夏期休暇を利用して、大英図書館の資料を読むことができたことにより、慈善活動については、個人の慈善と組織的慈善の両方について研究を進めることができた。スペンサー伯爵夫人(Georgiana, Countess Spencer)の膨大な書簡・日記(未出版マニュスクリプト)の研究については、請願者個々人の事情を訴える手紙と文学的流行の間の関係をジャクソンの論文で示した。組織的慈善に関する文献では、18世紀半ばに設立された売春婦更生のための慈善施設(The Magdalen House/Hospital)に関わる出版物(出版されたもの以外は失われている)及びその設立に関わった人物の出版物を同じ滞在中に読み資料確認を行って、慈善の対象となった売春婦観の18世紀半ばから19世紀半ばにかけての変化をたどった。他に、18世紀から20世紀を概観しイギリスの出産時のケアの特徴を指摘する論文、湯治都市バースでの文学者の間のケアのネットワークについて考察した論文と、死期が迫っている夫のケアのあり方を分析した論文を書いた。
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