二重目的語構文を取る現代英語の主要な与格動詞25個を取り上げ、典型的な二重目的語構文とそれらの受動文から成るアンケートと、間接目的語と直接目的語の間に副詞を介在させたアンケートを作成し、今年度はシドニーとシンガポールを中心に調査した。英国人や米国人の反応はこれまでの研究ですでにある程度は分かっているので、手はじめにこの2つの都市を訪問した。シドニーでの調査結果(調査対象者約40名)は英米とほぼ同じであり、シンガポールでの調査結果(調査対象者約も予想以上に英米と類似していた。これは音韻的には大きな違いがある英語でも、統語構造に関する英語母語話者の言語直感には大差がないことを物語っている。これに対して、ほとんどの国民が英語を話すフィンランドの首都ヘルシンキで別の機会に実施した同じアンケート調査の結果(調査対象者約20名)は英米とはかなり異なっており、フィンランド人の間でも統一性があるようには思えない。しかし、音韻的にはフィンランド人の英語はシンガポール人の英語よりも英米に近く理解しやすい。これはシンガポールでは英語が公用語ですべての国民が幼稚園入学以前から英語に触れ、義務教育も英語でなされているが、フィランドでは英語が公用語ではなく、義務教育もフイランド語で行われているという点に起因している、と考えられる。フィンランドもシンガポールもバイリンガリズムもしくはトライリンガリズムの国として有名であるが、今年度の調査結果は、英語に触れる年齢や教育制度が二重目的語構文の統語構造に関する言語直感に決定的な影響を与えることを示している。
|