研究概要 |
研究計画2年目にあたる本年度には、80年代に発展したアジア系アメリカ文化・文学がアジア系アメリカ人の政治的・社会的意識に及ぼした影響を研究した。昨年度に行った70年代のアジア系アメリカ人運動に関する社会文化論的研究の成果をふまえ、アジア系アメリカ文化・文学の先駆者的フランク・チン(Frank Chin)の文学・演劇テクストにみられる80年代における政治的・社会的意識の変容を究明するとともに、それと80年代に頭角をあらわしてきたディヴィッド・ヘンリー・ホワン(David Henry Hwang)などの新しい世代のアジア系アメリカ人の政治的・社会的意識を対比検討した。また、80年代以降のアジア系アメリカ人運動、アジア系アメリカ文化・文学の発展過程、および当時のアジア系アメリカ人の政治的・社会的意識を解明するための必要文献については、入手可能なものは入手につとめた他、国内で入手不可能の文献については、アジア系アメリカ文化・文学関係に関して世界で最も充実した蔵書を誇るUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)図書館に出張して資料収集した。同時に、UCLAアジア系アメリカ研究センター(Asian American Studies Center)において、本研究についてUCLAの教授陣をはじめ、そこで研究すべくアメリカ各地はもちろんのこと世界中から集まっているアジア系アメリカ学者と意見交換をした。こうして収集した資料の精緻な文献研究を行っただけでなく、それを補うべく、アジア系アメリカ人作家・芸術家(Russell Leong, Philip Kan Gotanda)への聴き取り調査なども行ったことにより、80年代にアジア系アメリカ文化・文学がアジア系アメリカ人の政治的・社会的意識に及ぼした影響の実態を解明した。
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