○主として次の3点において、所期の成果を上げることがてきた。 (1)「ロマン派医学」に具わる両面性(科学性と思想性)を追究する過程で、<癒し手>としての医者に当時求められていたロマン派倫理・哲学の特質を考究した。 (2)イギリス・ロマン派に特徴的に見られる病(ヒポコンドリア=メランコリー)への対処法(癒し)としてての作詩/読詩活動が有する、サイコソマティック(精神身体医学的)なメカニズムを考究した。 (3)「ロマン派医学」の観点から、医者/患者としてのキーツの複眼的視点を借りて、キーツのオードの再評価を試みた。 ○具体的成果としては、二編の論文、(1)「キーツの"my 1819 temper"をめぐって-Ode on Indolence論、(その一)」、(2)「同(その二)」がある。 論文(1)、(2)では、17・18世紀医療文化の伝統の担い手としてのキーツ(医者/詩人)とメランコリー患者としてのキーツの両面性が作品化されていく過程を究明した。これは、前年度に書かれた二編の論文(「キーツと『悲しみの秘儀』-Ode on Melancholy論」その一、その二)での論点を補強し、発展させたものである。キーツの宿痾メランコリーと同根の気分であるインドレンスが、いかにキーツの「詩人的牲格」と不可分のものであるかを実証した。その過程で、Ode on Indolenceをめぐるいくつかの謎(詩人の生前に作品が未発表だった謎、スタンザ構成の謎、執筆時期の謎、三人の登場人物の性別についての謎)を解明することができた。 キーツの宿病メランコリーと同根の気分であるイントレンスが、いかにキーツの「詩人的牲格」と不可分のものであるかを実証した。その過程で、Ode on Indolenceをめぐるいくつかの謎(詩人の生前に作品が未発表だった謎、スタンザ構成の謎、執筆時期の謎、三人の登場人物の性別についての謎)を解明することができた。
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