1.関連性理論において、発話は最適な関連性をもつという前提に基づいて解釈を行なう聞き手の能力とは、人間の生得的認知能力の一つであると考える。映画とテレビのインタビュー番組という2つの会話データを用いて、聞き手(読み手)の発話解釈に関する以下の考察を行った。 (1)映画の視覚的、言語的情報がその原作の解釈にどのように寄与するかを関連性理論により考察した。本研究では、映画の映像を見ることでその原作を読む速度が向上することを、一定時間に読める語数を調査することで測定した。テキストの解釈はテキストに関する背景的知識とテキスト間の相互的な処理により行われる。映画から得た背景的情報が英文解釈の際に強化されるにせよ、放棄されるせよ、読み手の認知環境は変化する。最も関連性のあるテキストの解釈とは、映画から得た背景的情報をそのまま想定として利用し、最も少ない処理労力で短時間に得られる解釈である。英文解釈の速度向上はそうした関連性の高いテキストの解釈を行うことに起因している。 (2)テレビのインタビュー番組の会話から収集した映像と音声データを用いて、聞き手が話し手の発話解釈を行う際のプロセスについて考察した。話し手の発話の方向性があらかじめ聞き手(インタビュワー)に了解されているとはいえ、意味の不確定さ、意味の拡充が行われている(詳細は5月に発表予定)。 2.音声と映像を記録することで会話のデータの収集を行った。 3.今後の研究 来年度以降は、会話データの分析を行い、インタビュー番組の会話データの考察を考慮しながら、発話解釈の実態を研究し、さらに発話解釈に関するこれまでの研究をまとめる予定である。
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