(1)今年度の調査として、特に17世紀イギリス文学における国家意識形成の状況に焦点を絞って資料を検索した。イギリス17世紀内乱時及び王政復古期の歴史的、政治的事情を正確に理解するために、オリヴァー・クロムウェルの護民官就任前後、インターレグナム期、及び王政復古期におけるイギリス議会資料を調査した。この調査と同時に、ジョン・ミルトンの作品におけるエルサレム再構築の主題、政治的主題、及び教会制度批判論文等の研究も進めた。以上の研究をコンピューターに入力、整理中である。なお、当初予定のアンドルー・マーヴェルの公共的主題を持つ作品、その他の風刺的作品における国家意識形成の研究は次年度に主に行うこととした。 (2)主としてコールリッジ及びワーズワースによるフランス革命及び英仏戦争に関する文学的記述を調査した。また、1770年から1840年にかけてのイギリス社会における奴隷制度に関する論争を分析し、上記調査と合わせ、イギリスロマン主義文学における国家意職構築の主題を研究した。この結果、イギリス18世紀文学において、国家意識形成とロマン主義思想はある種の関連性を示すことがある程度明らかになった。 (3)上記研究は、主としてオックスフォード大学ボドリアン図書館、ブリティッシュライブラリー、及びノッティンガム大学図書館における資料調査を行うことによって進捗した。しかし、当初予定の研究を十分に行うことはできなかったので、さらに次年度継続して行う必要がある。なお、上記研究成果の一部は、日本英文学会及びロマン派文学学会(ロンドン8月開催予定)で口頭発表の予定。
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