研究概要 |
本研究は新時代に相応しい「英語圏児童文学史」を再構築するために、カナダ・オーストラリア児童文学を比較対照し、新たな『英語圏児童文学史』を出版する前段階までの研究成果をまとめるものである。 14年度の研究計画は20世紀初頭までのオーストラリア児童文学作品および研究書を収集し、カナダ児童文学担当の共同研究者・桂宥子氏と研究進度を打ち合わせることであったが、計画・目標は達成された。オーストラリア児童文学の特徴は自然と人間との関わりだが、この研究は少ないため、最近発足した「ASLE-JAPAN文学・環境学会」の国際シンポジウムに出席できたことは、本研究遂行にあたって貴重な経験であった。 14年度の研究により、以下の知見が得られ従来の「英米児童文学」という枠内でカナダ・オーストラリア児童文学を論ずることの時代錯誤的性格が明確になったと思われる。この知見の一部は15年度に出版予定である。 1 20世紀初頭までの児童書が宗主国イギリスからの短期滞在者や入植者によって書かれたものであるにもかかわらず、イギリスの伝統・文化からの自由と独立を意識しているものが多い。 2 イギリス人のオーストラリア観、特に自然観や自然と人間との関係についての誤解などを正す意図が濃厚である。 3 イギリス児童文学のジャンルを踏襲しながらも、オーストラリアの独自性を打ち出している。 4 オーストラリアにおけるネイチャー・ライターの先駆者とされるドナルド・マクドナルド(Donald Macdonald,1859-1932)と児童文学との関係
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