研究概要 |
本研究は新時代に相応しい「英語圏児童文学史」を再構築するために、カナダ・オーストラリア児童文学を比較対照し、新たな『英語圏児童文学史』を出版する前段階までの研究成果をまとめるものである。16年度の研究計画はカナダ・オーストラリア児童文学関係資料の収集、ならびに両研究者によるカナダ研究機関への研究出張等であったが、計画・目標は達成された。 両研究者は国内で入手不可能な資料を収集するため,カナダのトロント公立図書館、リリアン・H・スミス・ブランチ、および同館内のオズボーン・コレクションを訪問した。そこには,カナダおよびその他の英語圏の児童文学作品が数多く備えられ、特にオズボーン・コレクションは初期児童文学の資料館として世界的権威のある図書館である。カナダおよびオーストラリア児童文学作品の資料を入手し、他所では入手不可能な作家の自筆書簡等の資料を閲覧・入手(コピー、特殊撮影)した。また,カナダ児童文学の代表的絵本作家たち(Margaret Bloy Graham、Aska Warabe)やカナダ児童文学の批評家(Dr.Margaret Maloney)や児童図書館員(Leslie S.McGrath, Aileen Waltrey)をインタビューし,カナダにおける児童文学の動向に関する情報を収集した。 オズボーン・コレクションの資料をもとに、牟田は論文「フェアリー・テイルと人類学の接点」を提出し、アボリジニ神話・伝説と人類学と児童文学としてのフェアリー・テイルを結び付けたアンドリュー・ラング論を追及した。同時に、ニュージーランド児童文学とオーストラリア児童文学が現在では切り離せない関係にあるため(同一作家/作品が両国の児童文学として扱われているため)、両研究者はニュージーランド児童文学にも目を向ける必要性を感じさせられた。 桂は岡山県立大学情報工学部情報通信工学科情報文化学研究室に所属するカナダ絵本の中から、300冊を厳選し、データベースを構築した。本年度、カナダの絵本300作品の表紙画像の取り込み及び「書誌学的情報」の入力が完了した。この成果は「カナダ絵本データベース構築に向けて」にまとめた。
|