本研究は新時代に相応しい「英語圏児童文学史」を再構築するために、カナダ・オーストラリア児童文学を比較対照し、新たな『英語圏児童文学史』を出版する前段階までの研究成果をまとめるものである。 本研究・調査の過程で、ニュージーランド児童文学がカナダ・オーストラリア児童文学研究の一部として位置付けられることを再認識した。その端的な例は、オーストラリア児童文学とニュージーランド児童文学両方にあげられる作家および絵本作家が出現していることである。オーストラリア児童文学を研究する上で、日本で研究が皆無の状態であるニュージーランド児童文学についても調査する必要を痛感し、調査旅行を実施した。また、資料収集の過程で判明したことは、ニュージーランド児童文学関係書のうち、世界的著名な作家の作品以外はニュージーランドの出版社から出ており、それらを日本で入手することが非常に困難であることである。そこで、ニュージーランド児童文学資料収集と、著名な作家・研究者にインタビューする目的で、クライストチャーチを中心に調査を行った。 ニュージーランドが誇る世界的な児童文学作家マーガレット・マーヒー(Margaret Mahy)氏と、国際的に知られ、日本語訳もある絵本作家のガビン・ビショップ(Gavin Bishop)氏にインタビューを行った。ビショップ氏は特に先住民マオリの血をひく作家で、マオリの文化・伝説を主題にした絵本を多く出し、数々の賞も受賞している、現代ニュージーランドを代表する作家である。 また、クライストチャーチ教育大学児童文学センターを訪ね、所長のジョン・マッケンジー(John McKenzie)教授にニュージーランドにおける児童文学教育の諸事情についてインタビューした。同大学の児童文学教育用テキストの充実には目をみはるものがあった。 これらの成果は2006年後半に出版予定の『たのしく読める英米絵本』(ミネルヴァ書房刊予定)に収めた。桂が編集およびカナダ絵本を中心に、牟田がオーストラリア・ニュージーランド絵本を中心に担当した。
|