研究概要 |
本年度はニューヨーク市におけるアジア系アメリカ演劇集団の調査を行った。ニューヨークのアジ系アメリカ演劇集団としては、Pan Asian Repertory Theatre, La Mama Experimental Theatre Clubでパフォーマンスを行うSlantの存在などが挙げられる。これらは定期的に上演、reading、ワークショップなどの活動を行っている。La Mamaは自己の劇場を有しているが、1976年創設以来、アジア系アメリカ演劇を最も頻繁に上演しているPan Asian Repertory Theatreは占有の劇場を持たず、予算も非常に限られている。Pan Asian Repertory Theatreは、アジア系劇作家の作品、『羅生門』の翻案劇などを数多く上演しているが、アジア系以外の観客層に受け入れられているとは言いがたい。内容もアジア系の文化に全く無縁であれば、理解しがたい部分もある。Slantは、メディアにおけるアジア系アメリカ人男性のステロタイプ、セクシュアリティに関するイメージを揶揄する内容のパフォーマンスを行う、3名のアーティストによるグループであり、刺激的な存在であるが、まだ一般へ観客への宣伝は行き届いていない。アジア系の演劇がBroadwayの劇場で行われるのは年一度ぐらいであり、それも白人観客がアジア系の国々に抱くエキゾティシズム、オリエンタリズムを喚起する内容のものが多い。Tony賞を受賞したDavid Henry HwangのMButterfly(1988)がアジア系のコミュニティから批判を受けたのもその点にある。Hwangは2002年の9月からBroadwayでミュージカルFloewr Drum Songの脚本を手がけており、アジア系の「代表」としての地位を築いているが、その一方で他のアジア系作家に対する門戸は開かれているとは言いがたい。
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