研究概要 |
本年度の研究は、ルネサンス期のイギリスにおける女性作家と男性作家による女性の主体構築の表象の比較を「異文化認識」を中心に行い、特に「黒い肌」の表象に焦点を当てた。夏には約1か月渡英し、大英図書館等で、日本では入手できない、当時盛んに出版されていたイスラム圏、特にトルコ、アフリカへの「旅行記」のリサーチをし、男性作家と女性作家の描く「黒」の表象の違いの文化的意味を、女性の主体構築の表象との関係から探究した。その成果を第42回シェイクスピア学会(2003年10月、於金沢大学)における特別講演、「"What is the cause that you thus sigh?":UraniaとOthelloにおける異文化認識」で発表した。さらにこの講演を加筆・改訂し、『東京女子大学英米文学評論』第50巻(2004年3月刊、pp.59-74)に掲載。2004年1月(本の奥付では2003年)には共著Women, Violence, and English renaissance Literature (Tempe, Arizona : Arizona Center for Medieval and Renaissance Studies)が出版された。 2003年9月には、Palgrave Macmillan社(ロンドン)と単著Gender and the Construction of Female Subjectivity in Early Modern England : Creating Their Own Meanings(使用言語:英語)の2005年9月出版の正式契約を締結。本書の第一章と、みすず書房から刊行される『シェイクスピアを書きかえた女性:レイディ・メアリ・ロウスとイギリス・ルネサンス文化』の第二章の草稿を仕上げた。 さらに、2006年7月ブリスベン(オーストラリア)で開催される第8回国際シェイクスピア学会で、セミナー"World Feminisms and Shakespeare Studies"をCarol Neely教授(米)、Kathleen McLuskie教授(英)と共同で企画し、座長を務めることが正式に決まり、すでにその準備が始まっている。
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